2010年12月23日

トップと社員の距離

暮れが近づき、他にやらなければならない事はたくさんあるのだが、そうした事からの逃避の気持ちもあり、部屋の片付けを始めた。手始めは本棚。まずはすべての本の背表紙が読めるようにすることを目指して整理を試みる。本棚の奥に収納されタイトルが読めなかったり存在そのものが分からない本は、ないも同然だからだ。

整理の基本は処分。もう読むことはないだろう本はどんどん捨てようと思うが、判別が難しい。迷わず捨てるに限るのは分かっているが。

奥から出てきた本の一冊に、元ソニー社長出井さんの「ONとOFF」(新潮社)があった。まったくページを開いてなかったので、なかをめくる・・・。

出井さんは忙しい。ソニーの社長業以外にGMの取締役などを務め、世界中を飛び回っている。時間がない時は、社用機のファルコンが活躍する。日本での週末は軽井沢で過ごす。昼間はゴルフ、夜はワインを楽しむ。時間があれば、ポルシェなど趣味の車を乗り回す。

そうした話が縷々綴られている。一般的な日本人経営者離れした、いかにも世界企業ソニーの社長らしいオフのスタイルが伺えて面白かった。日本企業の経営者でこれほどのハイセンスを身につけた国際的経営者が他にいるだろうか。

一番驚いたのは、本の巻末を読んでこれらの文章がソニー社内のホームページに掲載したものを書籍として再編集したものだということ。社員たちは、職場のパソコンの画面でこうした文章を読んでいたのかと思うと、彼らが何を思いながら出井さんの書いたものを読んでいたのか気になった。

僕が尊敬する経営者の一人に、元伊藤忠商事会長の丹羽宇一郎さんがいる。今年6月からは中華人民共和国の日本政府特命全権大使を務めている。彼は伊藤忠時代、一時間あまりかけ電車通勤していたことで有名だ。昼食は一般社員と同じ社員食堂でとったり、関連会社のファミリーマートや吉野家の牛丼を食べることもよくあったという。

どちらがどうというのではない。置かれた立場も異なるし、また人それぞれの価値観であるが、部屋の片付けをしながら、ある面で対照的な二人の経営者のスタイルについて考えさせられた。

2010年12月21日

見たいように、人は見る

JR渋谷駅のホームに書道の作品が並んでいた。書かれた文字は、すべて「箱根駅伝」(のはず)である。下の写真で、左から2つ目までも箱根駅伝に読める。なぜなら、駅の壁一面に張り出された何十枚(百枚以上あったかもしれない)がすべて「箱根駅伝」だから。それ一枚では何て書いてあるのか読めなくても、僕たちはまわりに引っ張られて「箱根駅伝」と自然と読んで(読めて)しまう。

だが、ちょっと待てよ。この作者はひょっとしたらいイタズラ心を発揮して、本当は「焼肉定食」としたためたのかもしれない。あるいは、そこまで逸脱しなくても「箱根駅弁」と書いていて、一人ほくそ笑んでいるかもしれない。そうだったら愉快だ。

2010年12月11日

見てるようで、見ていない

昼間、通信会社から携帯に電話が入った。自宅のネット回線をADSLから光に変えるため、建物への引き込み工事について調査をするという。

調査する回線工事会社が建物を特定するために、住んでいる建物の外壁の色を教えてくれという。はたと考え込んだ。何色だったか・・・。もう10年近く住んでいる建物だ。自分で「知らないはずはない」との思いが脳裏を走る一方で、思い出せない。風景を思い起こそうとするが、建物の色が浮かばない。

なんだかばつが悪くて「分からない」と言いそびれ、つい勝手な想像でグレーと答えた。帰宅した際に見たのは茶色の建物だった。毎日見ているはずなのに、見ていなかった。

人は見たいもの、自分が興味があるものしか見ていない。テレビの広告はまさにそうだ。また、店頭に並ぶ数々の商品もまったく同様。企業は、自社の流す広告は自分たちのターゲットが見てくれているものと思ってしまうところから、計画が単なる思惑に終わってしまうことになる。

2010年12月10日

頭打ち

5歳から17歳の日本人男子の身長の伸びが頭打ちになった、という新聞の記事を読んだ。国の2010年度学校保険統計調査の結果から。1948年の調査開始以来初めてとある。

文科省によると「遺伝や骨格から考えると、日本人の身長は頭打ちになった」らしいが、遺伝的に身長が規定されているのだろうか。骨格の変化もないということか。だが待てよ、遺伝が決定要因だとしたら、今後混血の日本人が増えるようになれば状況は変わるかもしれない。「日本人」とは国籍のことである。

それにしても、純血で勝負するのはやはりもう限界なのだと、あらぬ連想をしてしまう。日本企業も日本人にこだわらぬ経営が喫緊の課題になっている。

2010年12月9日

あれから30年

ジョン・レノンがニューヨークの自宅前で殺されてから、今日で30年になる。1980年12月9日夜、就職祝いを友人と新宿の飲み屋でやった帰途、駅のホームで号外を読んでいる人の紙面で知った。何か自分のなかに大きな穴が空いたような気がした。あの日、その後どうしたのか、まったく思い出せない。

2010年12月8日

一日何時間働くか

手帳の季節になってきた。書店や文具屋の店頭に種々の手帳がならび始めた。

勤務先から今年も大学名入りの手帳が配布された。歴史のある能率手帳だけあって良くできていている。見開きの左ページが一週間分のスケジュール記入欄になっていて、右側は自由に書き込める白紙ページになっている。

だけど、ある一つの理由から今年もこの手帳を使うことはないだろう。それは、スケジュール記入欄に事前に振られた時刻が朝8時から夜中の12時までだからだ。16時間!

つまりは、ほぼ寝ている時以外のすべての時間帯がカバーされているということ。この手帳を重宝する人ってどんな人か、ふと考える。自分はそうはなりたくないな、と思いつつ。