2016年8月1日

政治は政治、経済は経済、が正しい

先週の「木村達也 ビジネスの森」のゲストは、宋文洲さん。一昨年の秋にお越しいただいてからの2回目の出演である。今回は、彼が新しく出された『日中のはざまに生きて』(日経BP社)をもとにお話をうかがった。


宋さんのストレートで、舌鋒鋭い語り口はあいかわらず。どんどん話が進む。


中国人の訪日ブームはいまもやむことはないように見える。その理由をどう考えるかうかがったところ、理由として帰って来たのは意外な答え。それは、中国の景気にもとも関係するようなことではなく、日本の観光ビザの緩和という簡単な理由だった。


20年前に宋さんの妹さんが日本を訪ねようとしたことがあった。だが、その時20種類もの書類の提出を日本政府(現地大使館)から求められ、やっていられないとあきらめたとか。

今の訪日ブームは、中国の日本大使館が5年間有効の往復ビザを、簡単に中国人の普通のOLにでも出すようになったかららしい。そして、それは2年前に米国が中国人に10年間の往復ビザを出すようになったのがきっかけだろうと。なーんだと、拍子抜けした。いかにも対応が日本政府らしい(笑

ところで宋さんは、中国の経済成長は2013年に終わったと本書で書いている。そうなのか? 彼によれば、政府がGDPで操作的にやっている部分は1割か2割に過ぎず、大半は民間(市場)資本の手になるものだから、もう必要のないものは作らない。

だから、経済成長はいつまでも二桁成長を続けるはずはない、という考え。(数字が)いいときがあれば、そうではないときもあるのが当然なのだ。

翻って日本は、安定成長を重視するあまり、思い切り落ち込むときも落ち込ませない。構造改革のために経済成長がマイナス5%といったときがあったっていいじゃないかと。

10年間、20年間にわたってグズグズとゼロ成長に近いものが続くのはおかしい。良いときがあれば、悪いときもあることを、国民が納得していればいいのだ。「経済は別に政治家にやってもらわなくていいからさ」という彼の指摘に頷いた。

痛みを覚悟して時に血を流し、膿も出し切ることで、やっと健康な体を取り戻すことができるわけだろう。そうした痛みに向ける覚悟が日本にはない。だから、政治家もそうならないように細心の注意を払い、結果として本来あるべき健康体を取り戻すことができないことになる。

市場から退出すべき企業の多くが、いまも「雇用を守るため」という理由で税金が投入されたまま生きながらえている。人工呼吸器を付けられ、チューブから栄養剤を流し込まれながら生きながらえている姿だ。人間ならそれもありだろうが、企業は違うはずだ。


番組中で紹介した曲は、The Kinks の Sunny Afternoon でした。