2015年5月30日

ビジネスの対象としての自治体を考える

今朝の「木村達也 ビジネスの森」(NACK5)は、『地方自治体に営業に行こう』の著者、古田智子さんにゲストに来ていただいた。


彼女は、建設コンサルティングの会社での営業経験などから、地方自治体が抱えている種々の仕事に通暁し、一方で民間企業とはその仕組みが異なることからある種ブラックボックスになっていた地方自治体対象のビジネスの存在の大きさに気付いた。

その目の付け所は秀逸である。彼女の本で知ったのは、地方自治体がカバーする幅広い領域にわたって民間企業が予算を獲得し、仕事を担っているということ。それは道路工事や学校建設などの箱物づくりではなく、多くのサービスが民間企業へ委託されているといった事実。

ただ残念なことには、そうした情報はあまりスムーズに自治体から民間企業には流れていないようだ。彼女の話を聞いていて思ったのは、決して公平性に欠けているというのではないが、これまでの役所ならではの習わしにとらわれ、相手の立場に立っているとは言い難い情報の伝達のあり方だ。

だからこそ、そうした点に彼女のようなコンサルタントの存在意義が光る。自治体が事業を行う予算は、まぎれもなく我々の血税である。それを有効に、かつ効率的に使ってもらうために、行政と民間の間ではさらに適切なマッチングが必要とされている。


今朝の一曲は、ヴァネッサ・ウィリアムスの Save the Best for Last 。


2015年5月18日

緊急増刷の連絡

ダイヤモンド社のN嶋さんから電話があり、『コトラーの戦略的マーケティング』が緊急に増刷されるとのこと。

昨日の日経の記事の影響力である。アマゾンでは、マーケティング関連の本のベストセラーリストで1位、ビジネス書全体でも2位にランキングされている。アマゾンにはもう在庫がないらしく、プレミアム価格がついた中古本しか掲載されていない。

マーケティング・セールス

ビジネス・経済

今回の増刷は21刷り目になる。文芸書や哲学書ではない、一般のビジネス書がこれだけ長く多くの方に読まれるのは珍しい。

2015年5月17日

『コトラーの戦略的マーケティング』

今朝の日経新聞「リーダーの本棚」の欄で松本晃さん(カルビー会長兼CEO)が座右の書、愛読書など10冊の書籍を紹介されていた。

企業が新しいことを始める場合に行う設備投資。個人にとってのそれは学ぶことで、その一番効率的な方法が読書だという記事中の彼の話に納得。


松本さんの座右の書は、堺屋太一『組織の盛衰』と同『風邪と炎と 第4部』。

愛読書は8冊があげられていて、経営書のトップに拙訳の『コトラーの戦略的マーケティング』が紹介されている。

「経営書では、『コトラーの戦略的マーケティング』は本当によくできている。コトラーさんは、これ1冊で十分です。5回読めば、マーケティングの本質がほとんどわかる」と書いていただいた。

いま日本で最も注目されている実力派経営者が太鼓判を押してくれたのだから、これは確かだろう。

この本の原著のタイトルは、Kotler on Marketing。そこで訳書は『コトラーの戦略的マーケティング』という名にした。そうしたら、その後日本で出されるコトラーさんの本は、どれもこれも(もとの書名にKotlerとなくても)真似て「コトラーの・・・」と彼の名前が冠に付けられるようになった。

松本さんとは、僕がこの本を訳した2000年にお会いしたのが最初だ。彼が当時社長を務めていたジョンソン・エンド・ジョンソンで取締役会メンバーにマーケティングについて話をする機会があり、それを契機に同社のマーケティング組織強化のお手伝いをずいぶん長いことやったことなど思い出した。

水田のあるホテル

泊まりがけの会議が那須であり、ひさしぶりに栃木を訪ねた。以前は小さな仕事場があって暇を見つけては訪れていた場所なのだが、震災後にそこを処分してからはこの地にはまったく縁がなくなっていた。

今回訪ねたのは「二期倶楽部」というホテル。那須塩原駅からタクシーで約30分ほどのところ。この時期、あたり一面に青葉若葉が生い茂り、道中緑がまぶしかった。

二期倶楽部は、那須の雄大な自然を利用したすばらしい施設である。野菜は自家菜園で無農薬によって育てられていて、卵やチーズは地元の契約農家から届けてもらっているらしい。

夜、外の風が入ってくるようにテラス側の窓を開けて寝たところ、夜明け前からカエルの鳴き声で目をさました。いくら田舎だといっても、やけにうるさい。

朝、目をさました後、外へ出て納得。昨晩は周りが暗くて気がつかなかったのだが、すぐ近くに田植えが終わったばかりの田んぼがあった。どおりでカエルがうるさいはず。敷地内に水田があるのだ。

朝食の時にホテルのスタッフにそんな話をすると、レストランで使う米はその水田で穫れたものを使っているとのことで、納得するとともに「そこまでやるか」といささか感心させられた。


2015年5月16日

負け組には敢えて自分から入らないことが大切だと思う

今日の「木村達也 ビジネスの森」(FM NACK5)のゲストは『英語もできないノースキルの文系はこれからどうすべきか』の著者、大石哲之さん。


大石さんは大学卒業後、コンサルティング会社などをへて独立、2年ほど前からご家族とベトナムへ居を移しているとか。そのことで「人生が楽になった」と言って憚らない。


「英語もできないノースキルの文系」というのは、学生の半分以上を占める。そうした彼らが、就職活動に際して横並びで企業に立ち向かっていき、ほとんどの学生はたちまちはねられる。

誰もがいわゆる一流企業を目指す、上場企業の方が非上場会社より「上」だと考える。上場会社に勤務することができるのは10〜15%らしい。その結果、しなくてもよい挫折を感じることになる。

全員が勝てるわけないゲームに横並びで参加し、そして負けることで自分はダメだと考えるようになる。悲惨ではないか。就活自殺なる言葉もあるらしい。

大学を4年間で卒業する必要はない。途中で休学して外国へ飛び、大学の勉強とは違う学びを求めたり、インターンシップなどで種々の経験を積んではどうなのだろうか。

人と同じことを考え、行うことのリスクに早く気付き、自分ならではの発想で他人と違うことへ踏み出すことである。

今朝の一曲に選んだのは、ナタリー・コール "Starting Over Again" 。


2015年5月11日

スマホより顕微鏡を与えよう

先週金曜日の新聞記事から。米ワシントン大学教授の鳥居啓子さんが、女性科学者に贈られる「猿橋賞」を受賞した。

植物の葉には、酸素や水蒸気を放出し、二酸化炭素を吸収する通気口である微少な器官「気孔」がある。それが形成される仕組みは明らかになっていなかったのを、5つの遺伝子が関係しているメカニズムを解明し、米植物界から「もっともシンプルかつ美しい生命システムの解明」と評価された。それは、「教科書を書き換える」とまで云われる大発見である。

彼女が科学への道へ興味を持ったきっかけは、小学生時代に親から小さな顕微鏡と生物図鑑を買ってもらったことらしい。横浜にあった自宅近くの田んぼの水でミジンコを観察して感動したという。

いい話だなあ。親からの最高の贈り物だ。アマゾンでいくらするかちょっと調べてみたのだけど、学習用の顕微鏡ってたいした金額じゃない。スマホより、ずっと安価だ。

2015年5月2日

爆発的に膨張するデジタル・アーカイブで生き残るには


 今日の「木村達也 ビジネスの森」の番組ゲストは、『誰が「知」を独占するのか』の著者で弁護士の福井健策さん。デジタル・アーカイブについての話をうかがった。


爆発的に膨張する情報の蓄積のなかで僕たちは暮らしていて、その中からはもう逃げられないらしい。テキストも音楽も映像も何もかもがデジタル化され、アーカイブ化されている。

それらのプラットフォームを作り運営しているのは、グーグル、アマゾン、アップルといったいずれも米国西海岸の巨大IT企業だ。何十億人というユーザーを持ち、圧倒的な支配力を持っている。

ヨーロッパは、そうした状況をよく思ってはいない。文化的侵略と考え、なんとかこの流れを止めようとする考えが拡がっている。たとえば「ヴィクトル・ユーゴー」を検索すると、検索ランキングの上位に登場する文献はフランス語のものではなく、英語文献が出てくる。こうした状況についてフランス人はたいへん強い危機感を抱いているという話は頷ける。

その結果、フランスやドイツが中心となりグーグルの対抗軸をつくろうとしている。米国サイトとは異なる、欧州ならではの巨大電子履博物館のようなデジタル・アーカイブを構築しようとしているのだ。

翻って日本はどうだろう。日本語の特殊性ゆえに、ある種の「鎖国性」を持って結果として侵略を防いでいるようにも感じられるが、実際のところはどうなのか、来週福井さんにうかがっていきたいと思っている。

それにしても、グーグルでの検索結果の表示を見て、その2ページ目に進む人は平均してわずか6パーセント、つまり94パーセントの人は最初の画面しか見ていないという事実、そしてさらには検索ランキングの上位3つで80パーセントがまかなわれているという偏りには唸らされてしまった。

検索結果の最初の画面に登場しなければ、それは存在していないも同然なのである。そして、上3つに入らないと見てもらえないということである。

今朝の一曲は、Sheryl CrowのSoak Up the Sun。