2014年8月24日

佐渡は、ワールドミュージックの世界最先端をいっている

駆け足で佐渡に行ってきた。

佐渡の南西部・小木地区には、太鼓芸能集団「鼓童」の拠点があり、彼らが中心に1988年から毎年1回、この地で開催している「アース・セレブレーション(大地の祝祭)」と題したイベントが行われている。
http://www.kodo.or.jp/ec/aboutec/

22日、夕暮れが迫ってきた頃、木崎神社の裏手の小高い城山公演の芝生の上でオープンコンサートは始まった。ステージの後ろは素通しで、ライトに照らされた木々が風に揺れている。うまく計算されたステージデザインに感心する。

地元ということもあり、演奏には鼓童のメンバー全員が参加。巨大サイズの太鼓をはじめとする楽器も総動員で、凄まじくパワフルかつスリリングな演奏を聴かせてくれた。

太鼓というシンプルでいて、聞き手の耳だけでなく体をも振るわせる原初の楽器が生み出す驚異のアンサンブルが佐渡の夜空に響き渡った。なんという幸せな体験。

https://www.youtube.com/user/KodoHeartbeat

海外からの観客が多いことも、この催しの特徴だ。カップルの場合は男性が外国人で、女性が日本人のケースが多い。恋人同士ではなく夫婦。ひとりで来ているのは、圧倒的に女性が多い。それって、なぜだろう?

何人かとお喋りしたが、日本語がほとんどできない人も多い。東京や京都ならそれでも観光客としてたいして不自由はないかもしれないが、ここは「佐渡」である。公演が終わり、島の各地に向けての特別バスが出発したのは、夜9時すぎ(それ以外、交通手段はない)。街灯のない島の漆黒の夜を走るバス。そのバスは、乗客が泊まっている民宿の近くになると停車してくれ、客を降ろしていく。

バスの運転手から、手振りで民宿のだいたいの場所を示されて降りていくドイツからのひとり旅の女性がいた。無事に自分の民宿を見つけられただろうか。民宿のお風呂を使えただろうか、翌日の広間での日本の朝食は大丈夫だったろうか、勝手にいろんな心配が頭をよぎる。・・・だが、きっとすべてなんとかなったに違いない。

公演初日の昼間、ネットで予約しておいたチケットを受け取るために、会場近くの神社に向かった。僕の前には、20代なかばの女性がいた。アジア系の女性だけど、日本人とはなんとなく雰囲気が違う。よく見ると、背負ったザックに太鼓のばちが2本刺さっている。

話しかけるとロサンゼルスから来て、日本を旅しているとか。彼女はアメリカ人だが、両親はベトナムからの難民。学生時代に日本の太鼓を知り、ほとんど恋におちたとか。それから地元でレッスンを続けながら、太鼓のプロの演者を目指している。日本語はほとんどできないが、佐渡に来る前には太鼓を叩きに八丈島と岐阜に行ってきたという。素敵だ。

太鼓の音を聞く者は静寂を聞く ーージョルジュ・ブラック


2014年8月23日

ホスピタリティの基本は笑顔

今日の「木村達也 ビジネスの森」のゲストは、元リッツ・カールトン・ホテル日本支社長の高野登さん。


ホスピタリティのベテランである。どんな感じでスタジオに現れるか、実は密かに注目していたのだが、扉を開けて入って来た時の溢れるような笑顔がすばらしい。

いつもにこやかな高野さん。けれど、子どもの頃は今で云う引きこもり少年だったとか。ひょんな事からホテルの世界に飛び込み、アメリカのホテルをいくつか渡り歩く中で広い世界を知り、尊敬できる多くの人と出会い、自らを変えていった。

その若々しさと溌剌とした姿に、最近いささかくたびれてきた己を振り返り、少し反省。

今朝の選曲は、イーグルスで "Take It Easy"。


2014年8月20日

婚活もトンカツのようにサクッといくのがいいのか

友人が「婚活」に忙しい。いま彼の人生の目的は、婚活でうまく成果をあげることの一点に集約されている。

この春、彼は7年ぶりに海外赴任から日本に戻ってきた。普通であれば2、3年間で戻って来るらしいから、よっぽど現地でのウケがよかったのか、代わりにいく別の社員が会社として見つからなかったからか。

現地で四十路を超えた彼本人にしてみれば、早く結婚して家庭を持ち、子どもを作りたい気持でいっぱいらしい。それは確かに分からない話ではない。

だから帰国するやいなや、大手の結婚紹介所に入会。それ以降、毎週のように開催されるマッチング・パーティに出かけ、そこで「これは」と知り合った女性とは、これまた週末の時間をやりくりしてデートをしている。ご苦労なことだが、本人たちは当たり前だが真剣で大まじめである。

普通に恋をして、その先に結婚という形が現れた方が自然でいいんじゃないの、といったコメントは彼には頭では理解できても「僕には時間がないですから」といわれると、そうかと納得してしまう。

いつからか就職活動が就活とよばれ、その流れの中で婚活が叫ばれ、なにやら就職するのも結婚するのもひとつの行事かイベントのようになってきた感じだ。

就活があるなら、そのうち「転活」(転職活動)や「退活」(退職活動)という言葉が出てきてもおかしくないわなと、試しにネットで検索したら、なんとどちらも既にあった。それなら、婚活に続く「再活」(再婚活動)はどうかとやってみたら、これも既にあった!

ところで、北方謙三が何かにこんなことを書いていた。「就活と縮めて表現するのが、私は好きではない。なんでも縮めさえすればいいと思っていたら、人生も縮んでしまうぞ」。 同感である。

2014年8月18日

本と、人と、旅

8月も半ばを過ぎた。お盆のシーズンも終わり、少しずつみんながオフィスに戻ってくる頃だ。

東名などの高速道路は昨日と一昨日が上り線での渋滞のピークだったが、それでもニュースなどで見聞きする渋滞の具合は以前に比べればずいぶん軽くなっている。

夏休みを分散して取るようになったことや、ナビの進歩により渋滞をある程度迂回して走ることができるようになったからだろう。また、ふるさとへの帰省を別の時期にずらし、お盆の間はのんびり自宅で体を休めたいという声を多く聞いた。

確かに蒸し暑いこの季節は、人混みに出かけていくより自宅でクーラーにあたりながら静かに本を読んだり、映画のDVDを見ることこそが相応しい感じがする。友人たちの中に、この機に備えて読みたかった書籍を「大人買い」したというのが何人もいる。

先日のラジオの番組にゲストとして来ていただいたライフネット生命保険の出口さんは、人が学ぶ手段は本と人と旅であり、それ以外はないと言っている。

優れた映画や音楽、芝居といったものからも人はいろんなことを感じ、そして考えるきっかけを得るが、たしかに本の代替品とはならない。それらは、ひょっとしたら旅のひとつかもしれない。

朝夕の通勤時間帯の電車の中で本を読む人が以前と比べて減った。20年ほど前は、多くのビジネスマンたちは車内で本を読むか新聞を拡げるかしていた。やがてiPodなど携帯音楽プレーヤーで音楽を聴くようになり、いまはスマホでゲームだ。

人に迷惑をかけるわけでもないし構わないといえば構わないのでだが、それでもいい年をした大人が男も女も電車の中でゲームに夢中になっている姿を決して美しいとは僕は思わない。

本に触発され、人にこころ揺さぶられ、旅に自分を振り返る。考えてみれば、至極単純なこのトライアングルを繰り返しながら、僕たちは生きてきたし、これからもそうしていくのだろう。

スマホのゲームは、つかの間の気分転換ならいい。だけど、大人が公衆の面前で、うつむき加減に目を凝らしてやるもんじゃない。

2014年8月15日

人気のないキャンパスで

いま大学は夏季休業中である。つまり、学生たちは夏休みだ。

今週は大学の事務所や図書館も一斉に閉室なので、キャンパスは死んだように静かである。大学の大代表の電話番号すら「○○日まで交換業務はしておりません」という音声メッセージが流れるだけ。

そうした時期ではあるが、きょうはちょっとした用があり、午前中から研究室で作業するために大学へ向かった。校舎の建物も閉ざされていて、防災センターと呼ばれる通用門のようなところからだけ身分証明書を使って入館できる。

静かで薄暗い校舎の中は、妙に落ち着く。数人の先生の研究室には明かりが灯されている。静かな環境で集中的に作業を進めようとしているのだろう。

当然のように、教室には人気がない。こうした時期に利用されていないこうした教室は何かに使えないものだろうか。

2014年8月9日

生命保険の原点にかえって

今朝の「木村達也 ビジネスの森」のゲストは、ライフネット生命保険株式会社の会長兼CEOの出口治明さん。


日本を代表する生保マンである出口さんから、生命保険について多彩な話を教えていただいた。

ネット専業の生保会社と伝統的な(外交員による販売の)生保会社の違いを、200円の自販機の缶ビールと居酒屋で飲む500円のビールの違いと表現する。ビールはビール、中身は同じ。だから原価もほぼ同じ。だけど、提供のされ方が違うから顧客が支払う金額は違う。「ビールを飲みたい、だけどお金はあまりない人たちは自動販売機でビールを買うでしょう」と。

出口さんは、ライフネット生命を若い子育て世代を応援するために作ったと明言する。日本では若い世代が一番お金を持っていなからだ。


その思想は、250年前にロンドンで初めて生命保険ができたのと同じ。その原点に返って、生命保険を考えて作った。日本でまったく新しい生命保険会社ができたのは、なんと74年ぶり。国の膨大な規制をクリアして創業した苦労が想像される。


米国では生命保険は銀行の窓口での販売が一般的。欧州は代理店経由での販売。だから、ネット専業の生命保険会社は、ライフネット生命が世界で最初である。自動車保険や火災保険といった契約単位が1年、2年という短期の商品にくらべて生命保険は10年とかあるいは終身保険のようにスパンがはるかに長いため、その経営基盤を確実するのに時間がかかるためである。

まさにパイオニアである。その心意気を応援したい。 

今朝の一曲に選んだのは、CCRのプラウド・メアリー。


2014年8月2日

酒は背筋を伸ばして呑みたい

今朝の番組ゲストは、先週に引き続き「獺祭」の旭酒造社長・桜井博志さん。


今週は、酒を何でどう呑むかについて話を聞いた。桜井さんによると、磁器よりも陶器、さらにワイングラスが優れているとか。酒の温度をそのまま感じるためには、唇にあたるところは薄い方がよい。

パリに出す店では、有田焼作家の14代今泉今右衛門さんに獺祭オリジナルの杯を造ってもらっている。そうしたこだわりが桜井さんらしい。

店で日本酒を頼むと、小振りのグラスをマスのなかに入れて持って来て、客の前でそこに酒を注ぎこぼすというのをよくやれられる。グラスいっぱいに注がれた酒を客は持ち上げるわけにはいかず、背中を丸めてまずは少しすすり呑むようになる。

こうした飲み方が好きな人もいるのだろうが、僕は嫌いだ。だから、グラスの入ったマスを持ってこられると、マスなしで大ぶりのグラスに同じ量だけ入れて持って来てくれと頼む。最近では、行きつけの店はいちいち言わなくても僕には他の客とは違ったグラスを出してくれるようになった。

桜井さんもそうした大の男が背中を丸めて、グラスに注ぎこぼされた酒をすする姿がみみっちくて嫌いらしい。だから、その意味でも今のところはワイングラスがいちばん相応しいと考えている。

今日の選曲は、リンダ・ロンシュタットの「シンプル・マン、シンプル・ドリーム」。彼女のアルバム「シンプル・ドリームス」からの一曲。



2014年8月1日

花火と雨音

富士山のふもと。湖畔で今日花火大会が行われている。
小雨の中、かすかな雨音と花火の音が聞こえる。